【18】殴打事件の被害者になってしまう
年末年始で忙しく、約1ヶ月ほど面会に行けない期間がありました。
ようやく落ち着いて、年の始めに面会に行くと、男性患者と女性患者のスペースを区切るように、病棟の真ん中に鉄格子のゲートがありました。
ゲートの向こうからはなにやら男性患者の怒号が聞こえてきています。
看護師に「何かあったんですか?」と聞くと「いろいろとね」と言いました。
面会室に母が来ると、すぐに腕や顔に痣があることに気づきました。
男性患者にやられた、というのです。
一人認知症の男性患者で母に執着している人がいる、
その人が、夜中に母を触りに来たりしてびっくりした、
そのときは母の悲鳴で看護師がかけつけて何もなかったが、その後いろいろあって殴られた、という話でした。
話の時系列はあちこち飛ぶし、主語や述語の接続も無茶苦茶なので、何を言っているのか理解するのに時間がかかりましたが、おおよそそういう話でした。
いつやられたのか、と聞くと「3週間ほど前だ」と。
わたしとしては怒り心頭です。
すぐに看護師に責任者を呼べ、と言いました。
看護師長に事情を聞くと、母が言ったようなことが実際にあったと。
その男性患者は認知症で症状が激しく、今も落ち着いていない。
で、どういうわけか母のことが気に入ったらしく、夜中に触りに来たりした。
その男性患者は昼間に女性の部屋に入ってきてものを盗っていくこともよくあり、たまたま隣のベッドの人のものを持って行こうとしたのを母が咎め立て、もみ合いになった末に2,3発殴られたそうです。
なぜ報告がないのか、と問いただすと、「連携不足でした」などと言います。
これは大変なことではないのか、そういう認識はないのか?と聞くと、
起きたことの順にA~Jなどの重要度認定をする仕組みがあり、これは一番重大な出来事と認識している、とのこと。
しかし、医師、ソーシャルワーカー、看護師長、担当看護師の間で情報共有の連携がスムーズではなく、ご家族に報告することを怠ったまま時間が過ぎてしまった、隠蔽するつもりはなかった、ということでした。
わたしとしては、そんな説明でとうてい納得することはできませんでしたが、異なる職種間の連携がうまくいかない、等の組織にありがちな問題は、個人的にも多く経験があり、よく想像できます。
母の前でしたし、「貴方を守っているんだよ」というメッセージを暗に伝えるためにも、看護師長に対して一定程度、怒りを示しましたが、
自分が面倒見きれない母を病院に見てもらっている、というある種の負い目もあります。
責めてもしかたがない、と思いました。
男女別の病棟にできないのか?と問うと、それはできない、と。
今出しているゲートを常設すれば良いと言いましたが、それはなぜだかできないようで、そのことについては説明はありませんでした。
おそらくシステム的な問題だろうから、個人が気合を入れてなんとかなるものでもなし、改善されないなら転院したい、ということを伝えました。
後日、この件について、主治医を交えてきちんと話をしたいということを告げて、その日は終わりにしました。