【26】移送の完了、転院成る
移送当日までに、母に面会し、転院することを伝えると「退院だね」と勝手に喜んでいました。「退院とはいっても、すぐ入院するのだから、そんなに喜ぶような話ではない」とは言いましたが、あまり理解していないようでした。
移送当日、書類の手続きを受け付けで終え、病棟に向かって母を迎えに行きました。
私服の看護師さんが待機しており、ソーシャルワーカーの方と一緒に駐車場に向かいました。
病院が持っているワゴン車が来るのかと思っていたら、普通の車が来て、初めてお会いするもうひとりのソーシャルワーカーの方が運転する、ということでした。
要するに、病棟とソーシャルワーカーの間で綱引きがあり、どうにも解決できなかったのでソーシャルワーカーのチームで対応する、ということになったのでしょう。
車もそのソーシャルワーカーの方のものでした。2列シート、ハッチバックの5人乗りであり、少し不安でしたが、しかたがありません。
結局、その初対面のソーシャルワーカーの方が運転し、助手席にわたし、母の両隣に看護師と担当のソーシャルワーカーが乗る、という布陣で病院を出発しました。
担当のソーシャルワーカーの方が隣に座る、という点には、もうこだわる気もなくなっていました。
結果的には、思っていたよりも担当のソーシャルワーカーの方と母は親密そうで信頼関係があるようであり、よかったように思います。
山道を走る道中、看護師の方と担当のソーシャルワーカー、運転手のソーシャルワーカーの方が代わる代わる母の相手をして、うまく会話を繋ぎながら、ときどき「どこに行くの?」と不安そうにする母の気を逸らしていました。
内心、さすがにプロフェッショナルだな、と感心していました。
転院先の病院に着くと、あらかじめお願いしていたとおり、あちらの看護師さんが1人迎えに来てくれて、つつがなく診察室に母を連れていくことができました。
また入院する、ということがわかって母は悲しそうにしており、「こんな話は聞いていない」などと言っていました。
新しい病院は広くてきれいで、自然の中にあって静かで、内科や歯医者も常設されてあり、前の病院よりは遥かに環境が良いのを見て選んだのです。
男女別の病棟で、スタッフも医者以外はみな女性で、安心です。
そうしたことを改めて説明して、納得してもらいました。
もとの病院の方たちは、転院先の病院の方の簡単な引き継ぎをして、しばらくして帰って行きました。
お世話になった感謝を込めて、菓子折りの一つでも用意しておくべきだった、とあとになって気づきましたが、タイミングを逸しました。
諸事に頭がいっぱいで、そうしたことに考えを及ばせる余裕がありませんでした。
ともかく、またしても移送の壁にぶち当たりながらも、無事、転院を成功させることができたのです。