【6】医療保護入院を模索する

実家に帰ってきて、わたし自身も静養が必要な抑うつ状態にありましたが、姉の死にまつわる労働裁判、母の病気への対処をしなければならない状況でした。

母は統合失調症のひどい陽性症状を呈しており、まともなコミュニケーションが難しい状況にありました。風呂にも入らず、一切の外出を拒否して閉じこもっていました。

入れ替わり妄想、といういうのでしょうか。

自分は10人ほどの男女を出産したことがあり、その者たちが入れ替わり立ち替わり勝手に家に出入りしてきた。亡くなったのはそのうちの一人であり、本当の娘はどこかにいる。

そんな妄想を繰り返し話す状態です。

もちろん、「自分は正常である」ということには強く固執していて、病院に行くということも拒絶します。

何人かの精神科医にわたしだけで相談に行きましたが、いずれも「入院が必要」という判断はあったものの、「連れて来てくれ」の一点張りで、往診にも対応していない、とのこと。

昔ならば、親族の中で体力のある男性が集まって、無理やりふとん等で簀巻にして連れて行く、ということで対処していたそうですが、わたしには頼れる親族も兄弟もいません。

ネットで調べると「保健所が連れて行ってくれる」という俗説があったので、保健所に連絡してみましたが、そういうことは行なっていない、と。

市役所の精神保健福祉課というところが担当だ、と教えられました。

(未だにネット上のQ&Aサイトでは「保健所に相談しろ」という回答がありますが、地域によって異なると思います。まずは区役所などの行政機関に相談するのが先決です。)

教えられたとおり、市役所の精神保健福祉課に電話してみると、往診可能な指定医がいる、とのこと。

お願いして来てもらいましたが、母は部屋に閉じこもって診察を拒否しました。

一体どうすればよいのか、と途方にくれていました。

ともかく、説得するしかないと思い、わたしがかかっている精神科・心療内科に「息子の付き添い」で行ったうえで今自分が思っていることを話してみたら、と母に言ってみました。

奇跡的にO.Kしてくれました。

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