【5】病状の悪化と帰省、同居の開始
姉の死後、通夜、葬儀などの法事を慌ただしく終え、わたしは突然中断した仕事に一段落つけるためいったん東京に戻りました。
死の直後から法事まで、母は冷静のように見えました。独語や空笑もなく、ふつうに見えました。
しかし、2週間して様子を見に実家に帰ると、豹変していました。
げっそりと痩せ、まったく食事を取っていないようでした。
そして、49日まで設置する予定の白木の位牌や中陰壇、骨壷を完全に片付けてゴミ袋に入れて捨てようとしていました。
「あの遺体は娘の遺体ではない」「いろんな人間が家に勝手に出入りしていて、好き放題やってきた。あれもその一人だ」と主張し、
わたしに対しては、「お前は一体誰だ?」と詰め寄ってくるような状態でした。
発症したとき以来の衝撃でした。
ともかく、父に連絡して位牌や骨壷を預け、のちのことを話し合いました。
姉の職場とは常にやりとりがあり、労働裁判を起こすかどうか、ということも視野にありました。
それはともかく、母を一人にしておくことは難しい、と判断しました。
最終的に、東京での仕事を諦め、実家に帰ることにしました。
せっかく積み上げたキャリアや人脈をすべて捨て去るのは苦渋の決断でしたが、いたしかたありませんでした。