【4】姉の自殺
姉が同居をはじめて3年ほど立ったころ、姉が自殺しました。
わたしは東京で仕事に没頭していて、2年ほど実家に帰っていませんでした。
休日でしたが、従姉から電話がかかってきて、姉が職場で亡くなったと告げられました。
わたしは姉の携帯電話の番号を知りませんでしたから、祖母を経由して知らせが届いたということになります。
すぐに新幹線に乗って帰り、姉の遺体と対面しました。
父、母、姉、わたしの四人家族が一堂に介するのは、約10年ぶりのことでした。
家庭崩壊、機能不全家族…さまざまな呼び方があると思いますが、壊れてしまった家族の結果が、そのような形で現れていたのだと思います。
職場でいろいろあったと姉の上司に説明を受けました。
職場でのトラブルが自殺の直接の原因か、と思われました。
しかし、のちに遺品のなかから発見した姉のメモにはこうありました。
「頭のおかしい母を抱えたわたしに、未来はない」
母に聞くと、姉は同居中、母との接触を完全に拒絶し、同じ屋根の下に住んでいながら言葉をかわすことは全くなくなっていた、ということでした。
職場でいろいろあったとしても、家族がいれば、家庭があれば、精神的なタメとしてそれがクッションになって、耐えられるものだと思うのです。
残念ながら、家庭崩壊によって孤立し、母の統合失調症に絶望していた姉には、そのようなタメはなくなっていた。
職場でのさまざまな出来事を受け止められる余裕がなくなっていたのだ、とも思います。
母の病気が、姉を死なせる状況を作ったのだと、わたしは思いました。
そして、もちろん、わたしにも責任があると思いました。