【12】退院後すぐに治療を拒否
約束をしたのにもかかわらず、退院後2週間ほどして母が薬を一切服用していないことがわかりました。
部屋で飲む、と言いながら自室に戻るのがおかしいな、と思っていたのですが、すべて捨てていたのです。
デイサービスも、初日に行くことを拒否して、その後一切行くことを拒絶するようになりました。
どうすることもできません。お手上げです。
主治医に電話しして、「こうなってしまった。入院治療にはなんの意味もなかった。お世話になりました」と泣く泣く告げました。
わたしとしても、退院直後から約束を反故にされた怒りもあり、「もう知らん」という心理状態になってしまいました。
このときの思いとしては、また振り出しに戻ったというか、「俺が我慢して引き受けるしかない」というもので、母の病態に関しても「他人に迷惑をかけなければ、まあいいだろう」と思っていました。
入院させても短期間でまた退院させられてもお金が無駄になるだけです。
また独語と空笑がひどくなり、「風呂にはいるな」と命令されている、と主張して風呂にも入らなくなりました。
しばらくのあいだ、風呂に入るように促したりもしましたが、入った、と言っても浴室には行くものの湯船につからずに出てきたことがあって、もう諦めました。
本人が乗り気でないものをいくら勧めても難しいのです。
「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」とはよく言ったものです。
「母を風呂場に連れていくことはできても、風呂に入れることはできない」です。
仕事が忙しくなっていたので、同居しながらも、母のことは放置せざるをえなくなってしまいました。
少しずつ、姉と同じ道を自分が辿っているような自覚はありましたが、どうすることもできませんでした。