【14】急激に悪化し行方不明になる

わたしは、もともと忙しい仕事をしていましたが、さらに多忙になり、深夜まで働いてほとんど母に会わない生活になっていました。

そんな生活で1年半ほど経ったころ、今まで部屋に閉じこもりきりだった母が、少しずつ外に出るようになってきました。

それは、回復の兆しなのではないか、と思ったりもしましたが、違いました。

あるとき深夜に家に帰ると、出ていきそうな母と玄関で鉢合わせになり、「こんな時間にどこに行くの?」と問うと「故郷へ帰る」と。

そのときは「いやいや電車もないし」「故郷に帰っても家ないけど」などといって引き留めました。

数日して、家に帰ると、今度はあらゆる荷物が外に出されていて、マンションのゴミ集積所に持って行かれているものも多数ありました。

大半回収しましたが、革ジャンなど高価な服が一部戻らず、苦い思いをしました。

本人は、「そんなことはしていない」とどこ吹く風です。

「ヤバいな」という気がしましたが、「勝手に出て行ったり、ものを捨てたりしないでくれ」とやんわり言うくらいしかできません。

しかし、次の日の夜、帰ると母がいなくなっていました。

深夜であり、電車やバスはありません。

散歩に行ったのだろう、と思うようにしましたが、朝になっても帰ってきませんでした。

まずいな、と思いつつ、出勤しました。

今日の夜帰ってもいなかったら警察に捜索願を出すしかない、と腹を決めました。

その日も仕事が忙しく、ほとんど未明になってから帰宅しました。

帰ってきた形跡はなく、母の姿もありません。

「これは本格的に行方不明になった」と認識し、早朝になるのを待って警察に届けました。

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