【16】二度目の医療保護入院の始まり

再入院した母は、すぐに鍵のかかる部屋に入れられました。

前回の退院直後に治療を拒否して以来、7年の時間が過ぎて、病院のスタッフもほとんどが入れ替わっているようでした。

主治医と話をしましたが、わたしとしては、前回治ったと言われて退院したが直後から治療を拒否したことを強調し、本人に病識がなく、受け入れる態勢がないのに退院させることには同意しかねるので、きちんと治療をしてほしいということをお願いしました。

諸事情により、発病してから20年間、治療ができた期間は前回入院した3ヶ月のみであり、数ヶ月で回復するようなものではないと思う、とも伝えました。

主治医の方も、再入院であること、警察沙汰になって移送されてきたことを重く見ているようでした。

前回の入院時には、鍵のかかる部屋に入っている間には面会に行きませんでしたが、今回は入院して3日後くらいに入院生活に必要な備品を持って行きました。

本人が惨めな思いをしないように、履き物や洗面器は綺麗で見栄えのいいものを選びました。

個室は鍵がかかる仕様にはなっていましたが、ドアが開け放してありました。

ベッドと便器があるという、独房のような造りの部屋でした。

よく見ると、壁には患者が塗りたくったのであろう大便の茶色い筋がこびりついており、陰鬱な気分にさせられました。

こういうのを母が見ると、自己肯定感が削られるだろう、と。さりとて、病院側にこれをきれいにしろとも言いにくいし、それで母が初めて認識したとしたらやぶ蛇かもわからない。気づいていないことを祈るばかりです。

母は疲れきっており、永年の闘病生活のせいで痩せこけていました。

警察署で見た時に気になっていた顔色の悪さがよりはっきり見えたような気がします。

栄養状態が悪かったせいで黄だんが出ているのか、顔全体が黄ばんでおり、頬のあたりにうっ血したような黒ずみもありました。

偏食ぶりがひどかったためでしょう。もっと早くに気づいておくべきでした。

ここまでの状態になるまで放置してしまって申し訳なく思いました。

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