【2】初めて精神科医に相談する
発症から4年が経ち、わたしが大学3年生のときに、母がマンションの下を歩いている人を目掛けてものを投げる、ということが起きました。
母に会うと、完全に目を据わらせていて、被害妄想を語り、存在しない敵に対する怒りをたぎらせていました。
マンションの管理事務所からの呼び出しに祖母や姉が応じなかったので、わたしが行って説明しました。
何とかして治療を受けさせる、当分わたしが一緒に住む、ということを言って、穏便にすませてもらうように頼みました。
一方で、当時わたしが軽い抑うつ症状でかかっていた精神科医に相談しました。
そのときは、「入院の必要がある」とは言われませんでした。
しかし、「緊急性を要する」と先生が判断して、「良い手段ではないが…」といって、無色透明の水薬を飲み物に混ぜて投与するように言われました。
そのとき、母ではなく、わたしに対して処方するという形を取りました。
これは飽くまで裏技的なものであり、一回限りの対処方法だったということです。
(のちに、さらに症状が重くなった時に、先生に同じように頼みに行きましたが、
「あのとき、君はわたしの患者だった。君の状態を良くするため家庭環境を整える、という大義名分があって行なったぎりぎりの応急処置であって、二度目はない。」と断られました。まあ当然ですよね。)
その薬をココアに入れて飲ませたりして、しばらく母には黙って投与し続けると、母の状態は落ち着きました。
それで、わたしも大学のほうが忙しくなってきたので、また母を一人置いて、下宿に帰って行きました。